■神奈川県立近代美術館は鎌倉、鎌倉別館、葉山の3館体制で、そのうち鶴岡八幡宮境内にある鎌倉館は土地を賃貸契約が今年度いっぱいで切れるそうで、とりあえず閉館することが決まっています。契約上は更地にして返却することになっていますが、鎌倉館の建物そのものは坂倉準三設計で、戦後まもなく造られた国内最初の近代美術館(「近代」というくくりはなんか微妙な気がしますが)というメルクマール的な建築物ということもあって保存するかどうかは議論の対象になっています。本館の隣にある新館の方は比較的最近に増設された建物で、しかも耐震基準を満たせず閉鎖状態が続いていますからそちらは保存されないのだろうとは思いますが。
そんなこんなで鎌倉館は今年度は閉館を前にした美術館施設そのものの回顧展という趣になっています。3部構成の展示で、4月から6月にかけての展示は「PART1:近代美術館のこれから」
「これから」といいつつも展示内容は過去の企画展からそれぞれ代表的な収蔵作品を展示する回顧展形式です。鎌倉本館は洋画、現代美術作品で別館は日本画展示です。西洋絵画技術を取り込み、その模倣をはじめて、その中から西洋絵画の技法を使って自分たちの表現を模索する、という流れだったと理解しています。その先に西洋を意識することから脱して今の現代美術(の絵画作品)があるのだと漠然と把握しているのですが、だとすると「近代美術館のこれから」は近代以前の日本絵画の伝統と現代美術との間のリンクを伝えるアーカイブに特化していってしまうのではないかと思います。かつての「近代美術」は今で言う現代美術に近い概念ではなかったかと思うのですが、その「近代美術」は日本特有のジャンルで上野あたりでよくある海外美術館コレクション展示で見られるカテゴリーの見せ方(印象派とかシュルリアリズムとかキュビズムとか)とはそぐわず、整合性は取られないままです。
現代美術はカレントフォーカスだとするなら、そこからアウトフォーカスしたものは「近代美術的」な扱いをされて、最終的に近代美術は前現代美術的なカテゴリとして回収されると思うのですが、現代美術は美術作品に対する考え方やコンセプトで切り分けられているようなので、そうなると現代美術のボリュームが今後増えていくにつれ近代美術そのものは古典的な一時代のアーカイブとして縮小していくのは避けられないように思います。