■最近は各地でビエンナーレというか、地域型のアートイベントが行われているそうで、九州北部でも行われている。別府の温泉イベントは行けなかったけど、博多のアジ美と北九州のビエンナーレは見たいと思った。今回は北九州。
北九州ビエンナーレのメイン会場はJR門司港駅近くにある旧JR九州本社ビル。門司港駅は鹿児島本線の起点で、かつては関門連絡線との中継地点として賑わっていたのだという、ことを後からWikipediaで知った。
山口から新幹線だと、経路としては一旦小倉まで出てから門司港へ引き返すルートと、新下関で山陽本線に乗り換えて下関へ行き、そこから門司港へ引き返すルートがある。今回は新下関で在来線に乗り換え。
新下関駅は、新幹線との乗り換え駅にしては寂しい山の中の駅。下関駅で一旦乗り換えるけど、そこはもう港町の様子が伺え、何か空気が違う。なにより人の数が違う。
乗り換えて長いトンネルを抜けるとそこは言うまでも無く九州で、景色がどことなく明るい。門司駅で鹿児島本線に乗り換え。門司駅周辺は何もなさそうで、ただ、海側に赤レンガの建物が目立っていました。
そして、門司港駅には11時過ぎに到着。駅を出て数分も歩けばそこは港で、ずいぶんあっけらかんとした港町という印象。連絡線との乗り継ぎ駅であることを思えばそうした設計は当たり前で、空港の足元に鉄道が入り込んでいるのと大差ないのですが、駅が港湾機能の一部なっているような造りが新鮮でした。
北九州ビエンナーレは門司港駅から出て目の前にある建物を会場にしているのですが、この旧JR九州本社ビルがまたいい感じに荒廃していて、懐かしのZAIM(横浜)を彷彿とさせました。ただ、オルタナティブスペースとして整備されているわけではないようで、エレベーターには「使用禁止」の張り紙がされているし、事務机は部屋の片隅に積み上げられているし、埃っぽいし、とその廃ビルっぷりはZAIM以上でした。
ただ、スペースの大きさはZAIM以上で、またビル内部の装飾も古い色を残していて、整備してギャラリーとして生かしてくれたらいいのにと思います。
展示作品は全てビデオインスタレーションで、テーマは「移民」。「移民」という単語そのものには時代がかったものを連想しますが、実際に扱われている題材は、つまりは「労働市場を求め、国境を越えて移動する人々」であり、いわゆる「外国人労働者」と呼ばれる人々です。
個人的に印象深いのは「ホミ/トヨタ」で、この一年間で起きた世界不況の影響で職を失ったブラジル人労働者がテーマです。印象深いのは、昨年自分はまさにその豊田市の現代美術館で「Blooming -きみのいるところ-」を観ており、そこではブラジル現代美術の紹介が行われていたからです。ブラジル人労働者の最も多いのが愛知県で、だからこそ豊田市美術館で行われたという政治的意義もあったのですが、その風向きは変わってしまっているわけです。「ホミ/トヨタ」に「Blooming」で感じた明るく暖かい風はもはやありません。
残念な感じがしなくもなかったのは、展示点数に少し寂しい印象が無くもなかったからでしょうか。「ビエンナーレ」「トリエンナーレ」と聞くと、どこか祝祭的な空間を期待してしまうからかもしれません。「移民」はアクチュアルでかつ港町にふさわしいテーマを扱った、実直な展示会でした。
一通り観終え、門司港から取って返して小倉へ行くことに。そちらにはサブ会場のギャラリーSOAPがあるということなので。それに、Art Mania Fukuoka経由でリバーウォークで展示があるという情報もあったので。それにどのみち新幹線で帰るなら小倉の方が手っ取り早いし。