■横浜トリエンナーレばかり行っていたので、ここらで他の美術館。久しぶりに原美術館へ行ってみました。「旅の後もしくは跡」はダイムラー・ファウンデーションジャパンの文化・芸術支援活動「アート・スコープ」のアーティスト・イン・レジデンス活動の成果発表です。
参加作家は大野智史、リタ・ヘンゼン、ベネディクト・バーテンハイマー、今村遼佑。大野智史はドローイング、リタ・ヘンゼンは写真、ドローイングとインスタレーション、ベネディクト・バーテンハイマーは写真・ビデオ、今村遼佑はビデオとインスタレーション作品。
個人的に印象に残ったのはリタ・ヘンゼンの作品と今村遼佑の作品でした。
今村遼佑の小さな街灯を使ったポエティックな作品が印象に残ります。「やがて雨は静かにノックする」はコツコツとノックする音がときおり響く、静かな雰囲気に包まれるインスタレーション作品なのですが、ノック音を発生させるソレノイドがむき出しになっているので、どういうことがおこるか見ただけで予想がついてしまうのが難点のように思いました。「風の凪」はビデオ作品ですが、映像作品中の時間経過をいじっていて、ずっと見ていると虚を突かれます。
個人的にもっともしっくりきたのはリタ・ヘンゼンの作品。写真、ドローイング、インスタレーションと幅が広いですが、どれも面白い。「天より落つ」は美術館のサンルームに白い紙風船をいくつも配置した作品ですが、それが美術館の庭の景色と重なって何か晴れがましさを感じさせます。内藤礼のインスタレーションから感じる印象に通じるものがあると思うのですが、こちらはずっと力強い。
そしてそれ以上に何気ない組写真のシリーズ「東京の外」が面白かった。目線の置き方が良くわかることもあったのですが、その中の一枚に、どこかのスーパーの店頭を収めた作品があり、その一点に惹かれました。
スーパーの店頭につながれた、おそらく買い物客がつれてきたミニチュアダックスと思われる犬と、子供が遊んでいる。スーパーの警備員と思われる老人が少し引いたところで見守っている風なんですが、視線は撮影者に向けられていて、微笑んでいます。おそらく撮影者自身も微笑んでいる。そうした、その場のなごんだ空気が伝わってくるようで、ただそれだけで足が止まってしまいました。
作品そのものはよくあるスナップで、特に何か特別な仕掛けがあるわけでもない。ただ、人が写りこまない写真群の中で、その一枚だけに人物が写っていることから、作者もこの一点を気に入っているのではないかとそんな想像をしていました。なかなか見飽きない作品です。