■横須賀美術館は久しぶり。天気はあいにく恵まれなかったのですが、屋内メインでバス移動なので、そこは気にせず。小林孝亘は今まであちこちの企画展で何度も目にしていましたが、個展は初めてです。まるまっこいフォルムに半ば抽象化された動物、人物、風景画で観ている側を包むような穏やかな雰囲気が特徴だと思います。3Dゲームでポリゴンのバリエーションを組み合わせてプレイヤーの似顔絵モデルを作るものがありますが、そのモデルを連想したりもします。
描かれているモチーフは身の周りにあるものが多く、すべてがその特徴あるフォルムと色調によって穏やかな印象に包まれている。ただ、抽象化された風景には現実感が薄い。会場の作品展示もそこを意識したのかどうか、奥に進むにつれて現実感が薄く、どちらかといえば超自然的な場面を扱った作品が増えていく。
「私たちを夢見る夢」にはこの世界を第三者的に俯瞰する視点を意識させられる。その視座の持ち方は内藤礼の「地上はどんなところだったか」を連想させもする。この世界から抜け出して、外部から観る視線。しかしよそよそしさはなく、この世界に寄り添うような視線でもあるように思う。
この世界から離れてこの世界を観る視線、は最後の展示室で強く感じる。会場出口前に展示された'Courpus Candle'はつまりは「人魂」のことだ。抽象化されたフォルムでおどろおどろしさは皆無で、この世界に漂う魂の象徴のように見える。「地上はどのようなところだったか」と尋ねれば、幾つもののやさしいフォルムと色彩のビジョンが帰ってくるのだろう。
横須賀美術館を出た後は汐入あたりまでバスで戻り、横須賀海軍カレーを食べて帰りました。
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