■所用があって上大岡までズーマーで。午前中に用事は済んで、そのまま鎌倉街道を南下して、鎌倉から逗子を越えて葉山まで。神奈川県立近代美術館 葉山館に来るのはずいぶん久しぶりな気がする。ましてやズーマーで来たのは一年以上前だと思う。
葉山館で開催されていたのは「宮崎進-立ちのぼる生命」展。宮崎はシベリア抑留の経験者で、その体験をもとにした荒々しい表現の作品が多い。「見たままをそのまま描く」のではシベリア抑留の体験で感じたことを表現できない、という作家コメントには素直に頷かざるを得ない。ラフなテクスチャから伝わるのは風景や情景ではなく、心象のようなものであって、それは確かに「風景画」に見て取れるものではないだろう。
荒々しい表現からは力強さや強い意志を感じて、それはシベリアの厳しい環境を生き抜いた体験に裏打ちされていることが伝わってくる。
面白かったのはシベリアやヒロシマなど重たいテーマを扱った作品の中に、咲き誇る花の野を表現した作品などもあることで、その作品もやはり荒々しい。作家は花に美しさではなく、乱舞する生命を見ているのだろう。
展覧会のタイトルになっている「立ちのぼる生命」も作品のタイトルで、この作品は美術館ロビーに置かれている。「これは何だろう」と思いつつも会場に入り、作家の作品を一通り見終えてから再びこの作品を目にすると印象が一変している。この作品は比較的新しい作品で、今年90を過ぎている作家の年齢を考えると、その大きさと力強い表現やテーマに驚かされる。
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