■資生堂ギャラリーの新人美術家をとりあげたアートエッグも3人目。古橋まどかのインスタレーション作品展示。展示されている作品は実家に帰ったときに整理して出てきた古い家具や雑貨を積み重ねた姿を撮影したもの。自作の紹介で古橋はデュシャンの〈泉〉を引用する。展覧会のタイトル『木偶ノ坊節穴』とあわせ、「作品」を作りにあたって意識的に「不要なもの」を取り上げ、挑発的なものづくりをしていることが解る。
デュシャンの〈泉〉は、美術館に「美術品とは見られていないもの」を持ち込むことで「美術作品」という箔をつけてしまうことで、美術作品とは何か、を問い直す作品となった。「美術館」という機関を通過することで、いわば「アートロンダリング」とでも呼べるような作用が働き、「美術作品」となってしまう。
古橋まどかの作品は雑多なものを積み重ねて構造を持たせたもので、そこからは整然とした秩序を見出すことができる。面白いもので、細部に注目しなければなにかのスカルプチャーとして見えてくるのだけど、細部を観てしまうと全体は解らなくなってしまう。距離を置いたときに、何かが見えてくる。しかし見ているものが変わるわけではないわけで、それは積み上げられた形・構造と照合される何かが見ている自分の中にあるということなのだろう。何かが自分の中にある琴線に触れる、あるいは自分の中にある何かに反応する回路が古橋の作品に対応している。
美術作品とはそうした反応を引き出すものではないかと思う。
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