■年が明けて最初の都現美。企画展3つに常設1つ。ガブリエル・オロスコはメキシコの作家。身の周りにあるものをすこしずらして日常の景色の中に面白味を呼び込む。作品は写真、彫刻、インスタレーションと幅広い。展覧会のビジュアルイメージにも使われているシトロエンは車体を3つに分けて、中央のエンジンブロックを持つ部分を抜いて細見のボディにつくりかえられている。仕上がりがずいぶん見事で、知っていても鏡か何かで視覚的なトリックを仕掛けられたような気分になります。
見ていて面白く感じたのは、作品がどこか内省的な印象を与えることでした。石にパターンを彫り込んだ作品や、ブーメランを切り出した端板は、外部から見えるものとは別にその内側にある形を探しているようですし、目の前にあるモノの中にある形を探り出していくプロセス、あるいはスポーツ競技の写真に丸と直線の組み合わせからのダイアグラム、中央に水槽を配置した〈ピン=ポンド・テーブル〉にはマンダラを連想させます。
メキシコという土地は古代にはマヤ文明があり、石のパターンにはその影響が出ているのかも…とは思ったのですが、そこは不勉強のため解りません。ただ、外向きに強くアピールするような作品というよりは、静かに内向きに引き込むような作品のように感じました。
同時開催の菅 木志雄展では、木や石、ワイヤなどを組み合わせて一つの秩序ある空間を作っていて、使っている素材はオロスコ展と似ているところはありますが、あまり内省的な印象はありません。一つの宇宙を観客に見せる、強いアピールを感じるという点でオロスコ作品とはだいぶ違うと思います。普段目にしている景色の中から、モノとモノの関係性を見出し、強調する。そこに世界の在りかたを見出す、というのは自分の外にある構造を取り出してみようとする試みで、目線が置かれる方向が逆のように思いました。
面白かったのは2つの会場の配置で、オロスコ展は3F、菅木志雄展はB1Fに配置されています。スペース上の都合があったことは想像に難くないのですが、結果としての配置だったとしても、二人の作家の方向性の違いと対比されているようで面白かったです。