■高松次郎は昨年末の千葉市美であった赤瀬川源平と同じハイレッド・センターに参加していたアーティスト。事物の見え方にこだわる点で、先日の菅木志雄と通じるものがあります。高松次郎の作品の中で「影」シリーズがありますが、わたしはその作品を国立国際の中でそれと知らずに見ていました。「影」はぼんやり見ていると会場を行きかう人の影が映っているかと思ってしまうのですが、描かれている影と解ると不思議な感覚を覚えます。作品として描かれているのは影の絵なのですが、その影を作り出したモデルを想像せずにはいられません。絵画はモデルを描くわけですが、この作品は〈影〉を描いたのか、それとも影を作り出したモデルを表現したかったのか。
高松次郎は事物をありのまま観ることができないことをテーマに、「反実在」という概念を表現することを突き詰めていきました。観察によって全てを知覚することのできない客観的実体というものを仮定し、表現したのが〈影〉シリーズでした。実体が投影された影をのみ知覚することができる、というのは何かイデア論的な感じもしますが。
その〈影〉を端的に表現していたのが会場入ってすぐにある「光と影」だと思いました。展示会場のキャプションだと、光と影がフラットに云々とあるのですが、これって光を見ることはできてもその光源をみることはできない、光も影も光源から投影された結果生まれた〈陰〉のようなものということで、やはり〈影〉シリーズと同列のコンセプトにある作品だと思います。
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