日常/ワケあり

■神奈川県民ホールで毎年企画されている現代美術展。今年は「日常/ワケあり」ということで、3人の作家による大型インスタレーションが展示された。撮影可の会場だったのだけど、カメラを忘れていったのは失敗。江口悟の「TWINS」はパッと見、乱雑に物が置かれているだけの空間のように見えるのだけど、良く見ると偽物で、何かが擬態しているようにも見えてくる。そう思って見てしまうと、「ワケあり」というタイトルがとてもしっくりくる作品。ホラーっぽいですが。田口一枝の「Llum/Stream」は光モノ。メイン会場の大型空間に光が乱反射する。個人的に面白かったのは播磨みどりのインスタレーション作品

「Passengers」は細長い室内の両端にあるスクリーンに投影された2つの映像、朝の横浜港と夕刻の森に挟まれた中央に白い紗に囲まれた空間に馬と子供、狼(か狐)の像が立つ。それは朝から夜を巡るサイクルの中にある自然とも読めるし、生から死へと向かう「百代の過客」とも読める。流れる時間の中、一瞬たち現れ、消えていく姿。それこそが生命の本質、我々という存在の実像ではないのか。いろいろと読み取りの幅を持つ作品。
 もう一つの作品「NEGATIVESCAPE(House)」は、家の姿をしているが、その姿はどこかとらえどころがない。実体としてそこにあることは感じられるのだが、見せ方の巧みさで、虚ろで実体を持たないようにも見える。その家の中には森の映像。外にあるべき景色が、ここでは反転して室内に閉じ込められている。そうした座標変換を通して作られた虚空間ということになる。外の景色を内に持つ空間を目の当たりにして、そこにわずかながらの畏れを持たずはいられない。

「日常/ワケあり」というタイトルに一番しっくりきたのは江口悟の作品だったけど、やはり強烈に印象を残すのは播磨みどりの2作品だった。正直、神奈川県民ホールのギャラリーはちょっと古ぼけててあまりイケてないのだけど、その印象を飛ばしてしまう。普段の印象を変えてしまうという点では、田口一枝の光の反射を扱う作品もそこは同様だった。

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