■東海地方の現代美術企画展というのは探せばちゃんとあるもので、今度は岐阜県美術館で企画された田口コレクション展Iへ。西濃運輸系の財団法人とセイノーホールディングスから寄贈された作品の展示で、コンセプト的にはほぼ同時期に開催されている森美の「アートは心のためにある」と似ている。ただ、森美は寄贈作品ではなく、UBSの企業コレクション展示になっている。
岐阜県美術館は名古屋からだと、大垣行きの特別快速に乗って20分ほど。西岐阜駅で降りて徒歩15分。大垣にはIAMASの卒展があったときに訪れていて、古い町並みの残り香のようなものを感じ取れたのですが、西岐阜駅周辺は田畑から住宅地へのコンバージョンが行われた、郊外のようなところであるらしく、駅周辺は農地と宅地が混交し、その中を突っ切る幹線道路沿いにショッピングセンターや倉庫、事務所などが散在する、地方の景色が広がっていました。到着したのは午前中で、展示を見終わった後に駅周辺で昼食でもと考えていたのですが、駅周辺でそれはとても期待できそうにありませんでした。まあ、食事はなんとでもなるだろうと、美術館へ。
アートを見に来て食べることばかり考えているというのもどうかと思いますが、美術館へ歩く間、周囲に目を配っていたのですが、だんだん食事をとるのは絶望的なことがわかってきました。たぶん、西岐阜駅周辺というのは、言ってしまえばベットタウン的な地域なのでしょう。遠くにショッピングセンターらしき看板が見えたので、西岐阜駅そのものがここの地域中心に対して外縁に位置しているようにも思えます。まあ、たぶん昼前には見終わるだろうからと、この土地で昼食を採ることはあきらめました。
美術館周辺はスポーツセンターや図書館、市立科学館などを集約した文教地域として設定されているようで、周辺の景色とは違いおちついた、都市郊外とでもいった雰囲気。ただここも、大垣で見たビジネスセンターのような、エンドポイント的なエリアであって、周辺地域との景観の連続性はありません。
企画展は、美術館の古典から近代までのコレクションを観てから田口コレクションに入るという形で、つまり、古典から現代美術までの変遷を追いかけるという格好になっている。美術館のコレクションについては具象画が殆どで、それが田口コレクションに入ると田中敦子の抽象画が出迎えるという格好。
出展作家諸氏は田中敦子を除いては今も活動されている方々なのですが、作品そのものはちょっと古いものが多かったです。習作やデッサンラフなどが大半で、完成作品そのものはもしかすると半数を割っていたかもしれない。原美でも見た宮島達男のLED作品 'Opposite Circle'を目にすることができたのは良かった。
先日に観た森美の「アートは心のためにある」が記憶にあるので、それを思うとこの岐阜美の展示は何か寂しいものを感じてしまうのは確か。作品点数もそうだし、来場者の人数も。でも、森美の混雑振りを思うとこちらの方が良かったかな。ゆっくり観れたし。
帰りはミュージアムショップで安土忠久作のウィスキーグラスを購入。自分は酒は飲めないのでお茶に使っています。名古屋常駐という立場でなかったらもう1脚買っていただろうな。