■先日都現美で「世界の深さの測り方」を観に行ったとき、同時に「田窪恭治 風景芸術」展も開催されていた。風景芸術とはあるけれど、実際には建築物のインテリア/エクステリアデザインに帰することができるとは思う。現地構造物のフォルムをほぼそのままにリノベーションするプロジェクトで、現地の景色に溶け込むように作られる。過去にはノルマンディーの礼拝堂を再生し、今は琴平山再生計画に関わっている。
金刀比羅宮での再生プロジェクトに関するもののうち都現美で「東京バージョン」として再現されているのは資生堂パーラーの「神椿」の装飾で、他に白書院のインテリア(進行中)、神椿ブリッジのプラン展示がインスタレーション風に展示されている。
空間の雰囲気は荘厳なもので、神の宮として名高い「こんぴらさま」の名を聞いて連想するに相応しい雰囲気を作り出している。ただ、実用的な建築物のインテリア/エクステリアという側面はあるわけで、いつもの現代美術展示を期待してしまうと物足りない。東京オペラシティーアートギャラリーでは時々建築系の展示があるけれど、プレゼンテーション風というわけでもなく中途半端な感じは否めない。ただ、この作品空間の実物を観たいと思った。
金刀比羅宮は香川県の琴平山にある。岡山から土讃線で特急であれば1時間ほど。途中には丸亀もあるから丸亀氏猪熊源一郎美術館もついでに。
岡山から丸亀を経由して、琴平へ。駅前は寂れていて何もないですが、参道に近づくにつれ土産物屋も増えていく。細い通りに車が何台も入り込んで渋滞を起こしていて、駅周辺が寂れている理由も解ります。
「表参道」は山道で境内手前まで続く階段の両脇に土産物屋が立ち並ぶ。大山の阿夫利神社までの参道と雰囲気が似ています。
境内に入って驚いたのは、鳥居に「しあわせさん、こんぴらさん」と書かれた看板が下がっていることで、人を呼び込む努力をしていることは「琴平再生計画」から知ってはいましたが、こうした形で行われているとは思いませんでした。
資生堂パーラーの「神椿」は本殿への途中に設けられている。ただ、その施設は崖の中腹に設けられていて、参道を上る参拝客の視線を遮らないようになっている。入り口の階段を下りるとその外壁に都現美で見た「神椿」のテラコッタで飾られていることが解る。
神椿はカフェ&レストランで、到着時レストランは営業外。カフェだけを利用しました。建物も内装も都市部にある建物と変わらず、その点で〈こんぴらさん〉の参道からは隔絶している雰囲気ではあるけれど、参道からは見えないようになっています。
さらに上ると本宮があり、その奥にある緑鳶殿は近代的な建築物に建て替えられていて、木造のままの本宮周辺の建築物との並びは奇妙にちぐはぐな印象を残す。ただ、その新しい建屋も構造物の殆どは地上部よりは地下に作られていて、視覚的に古い建物を圧倒するようなことはない。
極端な言い方をすれば、ここで進行しているのはテーマパーク化なのかもしれない。古い外観をフォルムとしてそのまま残し、建物の機能は新しく変わっていく。ずいぶん斬新なことがここでは進んでいるようです。最終的にどのような形となるのかについて、興味深く感じています。