■毎年この時期に観に行ってる「文化庁メディア芸術祭」今年も観てきました。商業ベースに乗っている作品が中心なので「メディアアート」から想像する、ちょっとがちゃがちゃしたよくわからないものというのは出てこなくて、技術的にはこなれたものが出てくる。観ていて面白いのは、できあがってしまったものではなくて、なんだかいまひとつな隙のある作品なので、ちょっとつまらない。
面白かったのはSymbiotic Machine(ブラジル)で、自然環境からバイオエネルギーを取り出して活動しつづける自律機械。自己増殖や自己修復機能はないけど、捕食し活動し続けるというのは生物にちょっと似ている。ただ、まあ、どこがメディアだという印象は否めないけど、そのあたりの無理やりな感じが委員コメントに出ていると思う。
印象に残った作品は「これは映画ではないらしい」。フレーム(静止画)の連続で動画とする現在の動画像記録メカニズムに対し、画面を構成する各画素の時間軸上の変化を連続的に記録していく。サンプリングという工程を含まないので「コマ」がない記録方式となる。2次元に並ぶ画素情報を1次元に再配列してフィルムに記録する方式で、1画素の時間軸上の光学的な変化は1本の線として記録される。
なんか微妙な気がしたのは、画素のサイズが有限で、それはフィルム状に線形に記録するということは、時間軸上できれいに分解された状態で記録されていないことを意味している点。画素を小さく、記録メディアとなるフィルムの移動速度を上げると記録情報の分解度は上がって明瞭な記録になるはずだけど、それならシャッターを使ってサンプリングした方が早い気がします。高速度撮影に向いているかもしれない、などと思うのだけどどうなんでしょう。
他に面白かったのはAuto-Complainロードバイクで路上状態を記録し、路面補修情報につなげていく、というもの。ロードバイクと交通インフラと行政をつないだ一種のクローズドシステムを構築している。交通インフラを利用しているロードバイクをインフラのライフサイクルに組み込む発想が面白かったです。
他はアニメ・マンガ部門で、「メディア芸術祭」らしいといえばらしいセクション。
砂村広明氏の「春風のスネグラチカ」がフィーチャされていて、帰りがけに買ってしまいました。この人の作品、ヒロインがだいぶ酷い目に合わされることがあるので(そういう意味で)ドキドキしながら読んだのですが、ハッピーエンドで良かったです。
他には「ジョバンニの島」が児童文学的なテイストの良作で、技術的にも面白いことしていて興味を惹かれましたが…自分にはどうかなあ。技術的には、回り込みのあるダンスシーンの描写でダンサーの動作をモーションキャプチャして、ラフなCG下絵を作成、それを元にアニメーター(井上俊之)が原画を作成。場面設計と大まかなモーションはCGサイドで行って、キャラクターの表情や動作の芝居をアニメーターが作図する格好になったということだと思うのですが、その分担でアニメーターの負担はどのように変化したのかちょっと知りたいところです。