■横浜美術館の新人紹介企画(NAP)。ときどきギャラリーを使って展覧会が行われていましたが、ここ数年は開催されていなかったように思います。カフェ小倉山で展示されていたこともあるけど、それほど規模が大きくなかったような。今回久しぶり(のような気がする)企画は'NAP'と名前を改め、初回はVOCA2014で大賞を取った田中望の「潮つ路」日本の土俗的な伝統絵画(という表現は適切でないのかもしれないですが)のスタイルを使い、民俗学的伝承をモチーフを描いた絵画群。フライヤーを見たときに昨年の山形ビエンナーレで目にした「ひじおりの灯」に似通ったものを感じて、作者プロフィールを確認したらやっぱり東北藝術工科大学でした。
「潮つ路」は日本書紀に登場するシオツチノカミにちなんだ名前で、海流・航海の神という解釈のほかに、製塩・漁労の神として宮城の塩釜大社に祀られています。作者はそこから鯨船をメインのモチーフに豊穣・祝祭のイメージを重層的に描きました。色調が赤・黒で見かけはちょっとおどろおどろしいのですが、描かれている画面はハレの景色そのものです。赤と黒はねぷたの色彩ですね。ツクヨミの住人、ウサギが多く画面を占めていますが、鳥獣戯画に描かれたウサギよりは…ちょっと現代っぽいかな。
東北芸術工科大学のプロモーションが熱心なのか、「東北芸術」というキーワードで昨年から露出が増えているように思います。ポップカルチャーからコンバートした「クールジャパン」コンテンツも面白いのですが、土俗的な伝統絵画に重層的にモチーフを乗せていくスタイルは個人的には新鮮で面白いです。
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