■モホイ=ナジという人はメディアアートの先駆的な位置にいた人物なのだという。今ある現代美術の直接的なルーツに近い作品を作っていた人ということになるのかもしれないけど、しかしその作品は突然変異のように出現したわけではなく、既存のモードの中から生まれてきて、あくまでもモホイ=ナジという人物の中で統合されていった、ということが見えてくる。自分にもそういうことが解ったのだから、良い展示なのだろう。
構成主義というモードの中でのドローイング作品や舞台背景のデザインなどキャリアを重ねて、その中で写真を使いはじめる。写真による作品制作のスタイルもそれまでのモードをひきずっていて、その後のインスタレーション〈ライト・スペース・モジュレータ〉にもその影響を感じる。
制作してきた作品はドローイング、写真、舞台背景、インスタレーション、インテリアデザイン、エディトリアルデザインと多岐にわたっているのだけど、その中心にあるデザインの軸はあまりブレている感じはしない。スタイルはそれほど大きくブレてはおらず、バリエーションだけを増やしていっただけと言えるのかもしれないけれど、その一方で作家として芯に持つあるモチーフの表現の完成度を高めていったとも言えるように思う。
自分は美術史というものを体系だって学んだことがないので、現代美術というものがどこから出てきたのかよく解っていなかったのですが、何も無いところから突如表れたわけではなく、オーソドックスなスタイルの中からスピンアウトするように発生してきたということが垣間見えたような気がしました。そういう意味で面白かった展示でした。
それはそれとして付属のレストラン〈オランジュ・ブルー〉って行く度に値段が上がっているような気がする。あのあたりだと食事できる場所がないから、困るっていえば困る。