■資生堂ギャラリーで若手作家のプロモーション企画「アートエッグ」がはじまった。今年も3名で、1月は加納俊輔展。会期終了間際に間に合った。だまし絵みたいな作品で、「写真撮影可」というのは、写真に撮っても作品の本質は捉えられないという確信があってのことだろう。写真は表層しか写し取らないからだ。
会場に入って木箱と三角にカットされた板を組み合わせたオブジェが目に入るのだけど、違和感がまとわりつく。木箱は妙につやつやしているし、木のオブジェもカットされた形状と木目のパターンがちぐはぐだ。近づくと違和感の原因は、オブジェクトの形状に合わせ表層だけを別のパターンにすり替えているためということが解る。見た目で一瞬騙されるのだけど、どこかに無理があって、その無理さが意識されない間は違和感として感じられている。作品制作のメカニズムが解ってしまうと、観る側にも構えができるので違和感は消えてしまう。
それはそれとして、作家が作品コメントにその「表層のすり替え」、「写真に感じる奥行の錯視」を強調しているのはちょっと気負いすぎではないかと思う。それは知っているから。
資生堂ギャラリーを出ていつものLIXILギャラリーへ。「堀口彩花 展 -陶 HOLE-」が面白かった。大きな陶器のブロックに穴を開けているのだけど、作品の主体は穴を開けられた躯体ではなくて、穴そのものではないかと思う。穴そのものはもちろん空虚なのだけど、無数に空いた穴が作り出すパターンが煌めく光を感じさせた。決して光るはずのないものが光を連想させたことが不思議で、面白い。穴のパターンが何かがはじける様を連想させたからではないかと思うのだけど、そのメカニズムは解らない。その錯視によって、空虚な穴と身を持つ躯体で主客が入れ替わり、穴そのものが作品の主体となっている。
LIXILギャラリーを出た後は表参道のジャイロで開催中の'SANDWITCH'で名和晃平の作品を観て帰路につきました。この日は無料展三昧。