■美術展の話題も久しぶりなら、千葉市美術館も久しぶり。自分にしては珍しく日本画・水墨画。フライヤーのビジュアルイメージだと、ちょっとフリークっぽい人物が描かれていて、だいぶ変わった画風の画家だったのではないかと思ったのだけど、別にそういう風でもなかった。確かに同時代のトレンドと比べればはみ出ていることが解るけど、今から見てみると特に奇矯という印象はなく、多少突っ張っている感じがする、というくらい。主流の、ありがちな画風を拒否して、あえて外した場面を構成したような、そんな印象。
確かに荒々しい描線も目立つのだけど、その一方でたおやかにたゆとう蝶も描かれており、技術的に描けないわけではないことはすぐに解る。たぶん、技術的には申し分なく、それでいて、あるいはだからこそかありきたりな絵はあえて描かなかったのではないか。中央画壇のようなものに対する反抗のような意味合いが込められていたのかもしれない。そういう意味では「現代美術的」な内容を含む作品を描きつつけた作家なのかもしれない。
残念なのは、近年になって再評価されるまで、殆ど注目されていなかった画家だったということで、保存状態が良好なものが少ない。最も大きな屏風絵はこの展覧会でも目玉の一つの作品になるとは思うのだけど、紙自体の劣化や墨の褪色でコントラストが低下し、いかにも古びている。面白いのは、やはりその描かれた世界というのが、どこか現代美術に通じる、皮肉めいた「外し方」をしている点だと思う。
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