■「横浜市民ギャラリーあざみ野」はあざみ野駅から程近い「アートフォーラムあざみ野」という施設にあるギャラリー。存在も知っていたし、時々面白そうな展示があったのも知っていて、山口から引き揚げたら一度観に行こうと思っていたのだけど、そこに例の震災があって、もろもろスケジュールがのびてしまった。あざみ野は横浜市内で近いと言えば近いのだけど、意外と交通アクセスがあまり良くなくて(乗り換えが多い)ということもあり、行きあぐねていた。ただ、今回のクォン・ブオム展はちょっとTLに流れてきた(数多くはないけれど)評判が良さそうだったので思い切って行ってみた。面白かった。
クォン・ブオムは韓国人の写真家。「山水」はジャンルとしては風景写真になるけれど、対象は雪山で、遠景が多い。必然的に白い画面に黒い木々が写る。カラー写真そのままでモノクロ風の景色となり、また、降雪時に撮影した写真は遠くの景色は雪に隠れて白く霞み、空気遠近法のような見え方となる。クォンが撮影した景色はリアルな風景でありながら、伝統的な山水画のようなビジュアルを持っている。
通常「山水画」にリアリティを感じることはないのだけれど、クォンが写し取った景色はまさしく山水画だ。フォトリアリスティックな絵画、という作品は多いが、ここではその表現が逆転していて「アートリアリスティックな写真」ということになる。しかも、セットアップではなく、風景写真として提示されている。それはかつて山水画として描かれた景色はかなり確からしいリアリティをもって存在していたことをよく示している。そのことに驚く。山水画は様式化されているようで、一種、イラストに近いのではないかと受け止めていたので。そしてまた、そのような山水画を思わせる景色がいまだ残っていることにも。