■山口方面は現美濃度が低いので、何かと時間をもてあまし気味だったのだけど、思い切って博多に出ることにした。博多に出れば福岡アジア美術館があるし……あと、なんだろう。調べてみると、「三菱地所アルティアム」というギャラリーが天神にあることを知ったので、そこを覗いてみることに。それと、もうひとつ、アジ美がある博多リバレインという施設のB2にも「アートリエ」という芸術情報センターの出先機関というか、出店のようなものがあるらしいので、そちらも観てみよう。「アートリエ」では食事もできるようだし。
山口を出たのは午前9時過ぎ。博多に着いたのは10時半頃。まずは福岡市交通局発行の交通系ICカード「はやかけん」を購入。正直言って本格的に使いたおすつもりはないので(博多周辺ならSUICAが使える)、最小購入金額の1000円で。地下鉄博多駅から中州川端駅へ。昨年、第4回福岡アジア美術トリエンナーレで一度来たからもう迷わない。
福岡アジア美術館では、コレクション展が開催中。だいたい1900年頃から現在までの、アジア各国の平面作品が中心となっている。インド、パキスタン、シンガポール、フィリピン、タイ、上海、中国、韓国と地域を絞っているのは確かにここでしか観たことがありません。
単なる具象画・背景画、という観かたもできるのですが、それぞれの作品が制作された背景にはそれぞれの作家や地域が背負っている歴史的・政治的なコンテキストが横たわっていて、それを知ってしまうと絵が違った意味をもって迫ってくるようになる。
当たり前ですけど、それぞれの国ではそれぞれの事情があって、それぞれの作家はそれぞれの状況の中で生きている。それは日本で生きている自分の事情や、状況とは当然違うわけです。ただ、コンテキストを知らずに観ている時の自分は、自分が持っているフレームの中で観てしまう。
アジ美を一巡した後、リバレインB2のアートリエへ。ここはセルフサービスのレストランやショップや情報センターがあり、ちいさなギャラリースペースもありました。ギャラリーでは「おいしいデザイン」が開催中。ちいさな木箱にデザイナー達がそれぞれデコレーションを盛り込んで、箱庭世界を作り上げる。でもジョセフ・コーネルほど煮詰まった感じはなくて、どれもきれいなまとまった世界。
ここでカレーセットを食べて、天神へ移動。
天神IMSという施設は低層にはショップが入り、上層には医療系や教育系が入っている。三菱地所アルティアムはここの8F。入り口が狭いし、大きなネオンサインが出ているわけでもないので解りにくいけど、フロアに入っているテナントは多くないので、別に迷わない。とこで天神IMSは三菱地所グループで、そこの最上階に同系列のアート系施設が入っているという構造は、六本木ヒルズの森美と同じなんですが、意識しているのでしょうかね。
行った時にはここのギャラリーで牛島光太郎「意図的な偶然」展が開催されていました。些細なモノ、落し物や忘れ物、雑貨とも呼べないこまごまとしたアイテムに紐付いている作家自身のドメスティックな記憶を文章にして刺繍している。そこに語られる内容の優しさと、刺繍されている文字の柔らかさがマッチした、私的な空間になっていました。ただ、あまりにもドメスティックすぎるような印象はありました。内にこもってしまっているような。
アルティアムは広島のHAPや、伊勢のCAMI、ICCのエマージェンシーズ!のようなショートスパンの若手作家展示をしているようですね。博多だとさすがに移動経費がかかるのでCAMIの時のようにはいかないですけど、次回アジ美に来る時にはまた立ち寄ろうと思います。