■まあ、本当に降りっぱなしでした。土砂降りにならなかったのは幸いだったのですが、南へ下り、海に近づくにつれ、次第に風が強くなっていったような。吉島の中ほどを横断するように高速道の建設工事が行われていて道路が分断されており、少し迷いました。
その行程の途中途中にも作品が展示されていて、屋内だったり、屋外だったり。埃で汚れた倉庫の壁をスクラッチして中国の山水画を描いた作品(「路上山水図」水口鉄人)が面白かった。遠めには汚れた壁でしかないんですが、良く視ると山水がある。普段なら意識されない、つまらない街角の景色に、小世界があるわけです。自分は一度作品の前を通り過ぎていて、いかに普段路傍を見ていないかということにも気付かされました。
福祉センターに到着したのは11時半頃で、いいかげん昼時だったのですが、食事を取れるところがない。お昼は環境局中工場近くにある「あんず亭」で定食。結構なボリュームでした。
その後、ものすごく立派な、何かのゲームの最終ステージのようなゴミ処理場のゲスト用デッキに展示された「アウト・オブ・ディスオーダー」を見て、折り返し。ボートパーク広島の展示や、ちびっこ広場の展示はだいぶおとなしい感じでした。場所として面白かったのはキリン木材で、廃ビルだったのだと思うですが、ザイム的なオルタナティブスペースとして使われていました。ただ、場所に負けていたかな。もうちょっと大型の作品があると良かったかもしれません。
この会場には田中偉一郎や金氏徹平の作品もあったのですが、ちょっと小さめだったのと、床置きに近くて場所に負けている感じがしたのが残念でした。
逆に狭い部屋を使った、「バンドエイド・マーメイド」がホラー映画っぽい薄気味の悪さで面白かったです。
吉島オデッセイも、ここまで来るともう終盤。県営住宅団地もある住宅地の中にある東島集会所に展示された「傘 de Familly」(岸かおる)は家族の集合写真とその撮影に使われた傘の展示で、場所と良くマッチした作品だと思いました。
改めて振り返ってみると、最初の方でみた「皮膚」(鹿児島藍)や「うそつき」(ユミソン)、あるいは「日出ズル天の蓋」(Antenna)といった比較的大型の作品が印象に強いのですが、ルート的にはこれらはいわゆるトリにあたるわけで、そういう配慮がされていたのかもしれません。そう思ってビジターセンターでもらった地図を並べてみると、ルート上には比較的とっつきやすい作品が最初の方には並んでいて、キリン木材会場あたりがターニングポイントになっていたのかなという感じがします。自分はその逆を歩いたわけですけど。
残念なのは、こうした機会がなければ広島で、こうした若い方の作品をなかなか眼にすることができない(HAPなどのスペースがあるにしても)ことかもしれません。