■ちょっと面白かった。古新聞がまとめて廃棄されたような紙の海の中から、こよりでつくられた大きな牛が力強く立ち上がる。紙がもともとは森林から来たものを思うと、照屋勇賢の「告知」シリーズを連想するけど、牛だと何か違うような気もする。でも、面白い。紙の海から身を起こす牛の力強さが、紙を生み出した自然の姿を思わせる。
京橋にあるLIXILギャラリー。ほぼ1ヶ月単位で展示作品が切り替わり、個人的には面白かったりつまらなかったりするのだけど、「大地に、生きる」展は面白かった。
現代美術展に使われる部屋はギャラリーの中では大きな部屋なのだけど、その部屋をいっぱいに使い、広さを感じさせない。部屋の奥はくしゃくしゃにされた古新聞がうずたかく山になり、廃棄された古紙を思わせるが、そこから立ち上がる牛の姿は古紙が打ち捨てられたものではなく、今なお自然が持つ力強さを内包していることを示しているようだ。
あるいは、視ている側に向かってこようとする牛の姿は、復讐しようとしている姿なのかもしれない。
やきもの個展の部屋は村上 愛。有機的なフォルムをもつ幾つもの生物が融合したような造形物が置かれる。どことなくユーモラスな造形で見た目愉しい一方で、造形物にはとりとめのない、多少の不気味さもある。「不気味」という感想は、諸星大二郎の「生物都市」を読んだ記憶があるからかもしれない。さまざまなものが飲み込まれ、フォルムがないまぜになっていく。
これまで「やきもの個展」で様々な造形をされた作品をそれなりに見てきたつもりだけど、今回の造形はその中でも突出して個性的だと思う。「何かに似ている」という形容が自分にはできない。ディテールは細かく、オブジェクトは大きく、そして自分が見ているものが何か、解りそうで解らない。おおよその分類をすることも許さない。そういう造形の遊びが愉しい作品でした。