■期間が長いのでうかうかしていたらいつのまにか会期終了間近に。森美術館に来るのは久しぶりのような気がする。森美術館10周年を記念しての企画展「LOVE展」。ぶらぶら美術館でも先に観てしまったりしていたので油断していたらこんな時期に。チケット窓口前にはものすごい行列ができていて驚いたのですが、それはハリーポッター展の方でした。未だに人気なのね。
テーマは「LOVE」なので、それは解りやすいのですが見方が狭くなってしまったような気も。ただ、「愛」というものを他者との関係における基底要素としてとらえるとそれはいわゆる「人類愛」といったかなり意味の広いものとなって様々なものを包括するようになってくる。
面白かったのはイスラム圏の作家作品で、文化的な制約を持っているということもあるし、ついこないだまで継続していた戦争というものがあったという社会的背景もある。その強い制約の中で扱われる「愛」は、それに対抗するものの存在を強く意識したものとなっていて切実な空気が漂う。特にゴウハル・ダシュティの『今日の生活と戦争』(2008)はシャガールの軽々と浮遊する世界とはだいぶ違う。若い夫婦の食卓を戦車砲が狙うという構図は彼らの現実を巧みに象徴していて、そこにシャガール的な世界を持ち込んでもふわふわと漂流してしまうことだろう。「愛」を語ることすら難しい社会というも確かにある。
作品のほとんどは他の美術館でも目にしたことがあって、懐かしい作品も幾つかありました。特に福岡市美の常設でいつも目にしていたサルバトール・ダリの『聖母の肖像』をここでも観ることができて、つかのま山口に滞在していた時期のことを思い出しました。
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