■東京オペラシティーアートギャラリーの新しい企画展は昨年の個人コレクション展のバリエーションのような内容で、石川康晴氏のコレクションから。過去に観たことのある作品もありましたが、初見の作品も半分くらいありました。ライアン・ガンダーの黒い無数の矢で作られた長たらしいタイトルを持つ作品は面白かったですが、オマー・ファストのビデオ作品が印象に残りました。
オマー・ファストの『コンティニュイティ』はアフガニスタンに駐留していたドイツ軍兵士の帰還に伴うエピソードを扱った、ストーリーのある映像作品です。兵士仲間から切り離された兵士にとって実家は居心地のよい場所ではなく、両親との間には蟠りがある。その気まずい関係を追った映像は、実家に置かれているコミュニケーション困難な状況が、アフガニスタンでの体験と相似であることが暗示される。
コミュニケーションの問題は民族・宗教の違いによって生じるものではなく、もっと小さい単位でのカルチャーギャップによって生じていることが伝わってくる。
それにしても、過酷な戦地から帰還してもなおコミュニケーションの問題が続くのは、若い兵士にとって絶望的な状況だ。彼は繰り返し戦地で撮られた写真を手に取る。それは戦場への憧憬ではなく、同じ体験をした兵士仲間達の間に身を置いていた状況への懐旧だろう。いずれにしても、実家に身を置いて、戦地の体験を重ね合わせざるを得ない状況というのは悲劇的だ。
展示はコンセプチュアルな作品が中心で、作品点数はすこし少ないようにも感じました。プロジェクトNは三井淑香。極彩色のバロックな絢爛たる画面で、デコラティブな乙女の世界が広がっていました。ちょっと糜爛気味かもしれません。
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