■以前から気になっていた軽井沢にある美術館。場所が場所だけになかなか行く気になれずにいたのだけど、伊香保のハラミュージアムアークに日帰りなどして、多少は心理的障壁も下がっている感じ。頻繁に企画展を切り替える美術館でもないし、秋口のこの時期になれば山の様子も美しかろうと足を延ばした。東京から長野新幹線に乗って軽井沢。そこから軽井沢循環バスに40分ほど乗って、セゾン現代美術館へ。この循環バスはしなの鉄道の中軽井沢駅からも利用できるのだけど、昼食の都合を考えると中軽井沢駅下車は微妙かもしれない。中軽井沢駅周辺は食事できる場所が皆無ではないけれど、駅の近くにはさほど多くない。
セゾン現代美術館は彫刻の配置された庭園を敷地内に広く取っているのが特徴的で、その構造は御殿場のヴァンジ彫刻庭園美術館や箱根彫刻の森美術館と似ているけれど、展示彫刻が抽象的な造形の現代彫刻のみで落ち着いた雰囲気になっているのが箱根とは大きく違う。庭園の作りは明るい林のような構成になっていて、そこはガーデニング技術のプレゼンテーションになっていたようなヴァンジ(クレマチスの丘)とも違う。落ち着いた雰囲気。
開催されていた企画展「昨日の今日と今日の今日」は同美術館が継続的に開催しているART TODAY展で紹介された作家、作品の回顧展となる。25年続いている企画展ということだから、1985年頃にまで遡ることになる。ただし、年度順に並べられているわけではないから、変遷を辿るような形式にはなっていない。それでも観ているとなんとなく制作された年代がわかるようになってくる。それは色彩や、造形、発色といったものから感じているようにも思う。重く、暗く、何か手ごたえの残るような何かを残すようなものから軽く、明るく、何かふわふわしたものへ。あいまいとした、ぼんやりとした何か。しかし、決して居心地が悪いわけではない。とらえどころのない何かがあるような。
ここは企画展もさることならが、常設の展示も多くて、企画展示室へ向かう通路はウォーホルやマン・レイだらけ。空白の壁を許さないような勢いで、とにかく何かしら飾ってある。お勉強の気分に。ウォーホルは「毛沢東」がやたらと多かったのが印象的。大型のインスタレーションも多かったけれど、ちょっと古びているのが残念。例えばジャン・ティンゲリーの「地獄の首都」は消費社会・都市文明への批判の目線がこめられているのだけど、使われているアイテムが古く、現代への目線からは外れてしまっているように思う。同じコンセプトで後の時代で制作された作品は他にもあるのだからどうしてもそうなってしまう。
美術館の敷地内にある庭園はとても落ち着く空間となっていて好ましい。小川や林の間の小道を歩くとイサム・ノグチなどの彫刻作品に出くわすような作りで、しかし周囲を圧倒するような大型の作品はなく、周囲の景色に馴染むような配置がされている。彫刻作品が定期的に入れ替わると良いのですけど。ただ、帰りのバスを待つのに、あまり退屈しなかったのは確かです。
帰りは感光循環バスで中軽井沢駅へ。そこからしなの鉄道で軽井沢駅へ移動して、新幹線へ乗り換え。バスの便が少ないのがネックかな。レンタサイクルだと山道できついので、レンタルスクーターとかあるといいのですけども。
軽井沢周辺は、軽井沢現代美術館、千住博美術館など、現代作品をターゲットにした美術館の集積がはじまっている。たいがいの温泉街にも「なんとか美術館」はあるのだけど、それとは質的には少し違う感じ。もちろん国際的な現代美術イベントを開いた別府との比較はできないけれど、たぶん、うまくいけば良質な蓄積が進むのではないかなと思う。ただ、軽井沢はメルシャン軽井沢美術館が閉館することになっていたりとかもあって、コンテンツをきちんと選ばないとアクセスが悪い分、難しいのではないかなと思う。