■鎌倉の神奈川県立近代美術館は今年一杯シャルロット・ペリアン展。ペリアンは戦前、ル・コルビジェのインテリア担当としてキャリアをスタートし、1940年、日本の商工省からの招聘で来日し、工芸品を海外輸出向けの改良・指導するために柳宗理と共に日本全国を回っています。このときペリアンは日本の民芸デザインから幾ばくかのヒントを得たようで、その後のインテリアデザインに影響を見てとることができます。ミッドセンチュリーデザインのインテリア家具に関心があると、なんとなく見覚えがあるものが多いかも。
柳宗理らの民藝運動のことは知っていたのですが、時代的な位置づけがよく解っていませんでした。今回の展示で社会背景や位置づけがようやく解りました。ペリアンは日本が戦争に突入する寸前の世界で、柳宗悦や河井寬次郎らと接していたわけですね。ペリアンは日本の民藝活動に幾ばくかの助言を与えたわけですが、たぶん、ペリアンが日本のデザインから得たものの方が影響が大きかったのではないかと思います。
それだけに欧米の「ミッドセンチュリーデザイン」の中でのペリアンの位置づけがよく解らなかったのは残念でした。例えば「スタッキングチェア」のアイディアが日本の民宿で目にした「座布団を積み上げている」ことからインスパイアされたとか、スライドドアを移動させて隠し棚、飾り棚の構成を変更できるキャビネットの「雲」など、今も残るデザインだけに興味があるところです。ル・コルビジェのスタッフだったペリアンの影響力は決して小さいものではなかったのではないかと思うのですが。
本館でペリアン展を観たあとは別館で日本画のコレクション展。片岡珠子の肖像画がインパクトがあって面白かった。日本画というと、線が細くて写実的で淡い色合いの絵を連想するのですが、片岡の作品はそれらとは対照的で、あんまり写実的ではないし、原色系だし、力強い描線でした。これなら山口晃の諸作品の方が日本画を連想させるのですが、いったい「日本画」って何なんでしょか、と感じさせる展示で面白かったです。