■東京藝大付属の美術館や陳列館の存在は前々から知ってはいたのですが、場所がよくわからないこともあってなかなか行けずにいました。そもそも東京藝大がどこにあるかも今ひとつ知らないでいたのですが、上野駅からだと上野公園の裏手で、その近所にはこれまた前から気になっていたSCAI THE BATHHOUSEギャラリーもある。その界隈を見て回るつもりで行ってみることにしました。マテリアライジングII展です。
「マテリアライジング」は最初 'Materia Rising'だと思って何のことやらさっぱりだったのですが、'Materializing'つまり「物質化」の意味でした。もっと平たく言ってしまうと「情報の可視化」です。3Dプリンタやレーザーカッターなどを使い、情報を物体化する。出品者の一人がキャプションの中で述べているのですが、その「情報」というのは記録媒体上に載っている時点ですでに物質化されています。確かにその点で「物質化」というのは少しそぐわないのかもしれません。つまり、「情報の可視化」とは異なるフォーマット(というより「フォーム」)へのトランスコードでしかないわけです。
ただ、それはそれとして、トランスコードされたその形は面白い。東京藝大の陳列館は今回初めてですが、建物そのものが古く、味のある建物で、その内部空間にテクニカルな作品が並ぶのがかつてのZAIMを想い出しました。作品そのものではレーザーカッターで靴に物語を彫り込んだもの(レーザーカッター茶屋)が面白かったです。トランスコードのアイディア勝負と、最終的なアウトプットの見せ方という2つの評価軸があって、アイディアが良くてもアウトプットがダメだと印象に残らなかったり、アウトプットは面白くてもアイディアが陳腐だったりするのが難しそうです。その中でレーザーカッター作品はシンプルにアウトプットから逆算したモノづくりをしていたように思います。トランスコードプロセスから敷衍する場合は元々のアイディアが面白くないとインパクトが弱くなってしまっていたように思いました。