あいちトリエンナーレ2010

■1年ぶりの名古屋。名古屋には夜に到着して伏見に一泊。翌日は伏見駅のコインロッカーに荷物を預けて残暑厳しい名古屋の街めぐり。以前名古屋で暮らしていた時は、伏見から栄でも地下鉄で移動していた記憶があるけれど、意外と歩ける距離だったんだな。

 白川公園の名古屋市立美術館からスタート。開場時刻が9:30で一番早い。塩田千春、島袋道浩、トム・フリードマン。島袋の「漁村美術」は美術展そのもののパロディのようにも解釈できるし、そのタイトル通り「漁村」に埋没していた美術作品の発掘のようにも受け取れるのだけど、半々なのかな。もったいつけて展示されている美術作品の価値を相対化してしまった。トム・フリードマンの作品では写真をコピーして細かく裁断し、再構成することで遠目にはぼんやりとしたポートレイトや1ドル紙幣のように見える作品が印象に残った。肥大化した自己や、バブル。等身大ではなくなってしまったセルフイメージとして。塩田の作品は、以前資生堂ギャラリーで観た"Wall"のヴァリエーションで、「皮膚からの記憶」を連想させるサイズと構図。そこで循環する血液は生きている身体を連想させて生々しい。観終わった後に美術館に程近いケンジタキギャラリーへ。ここでも塩田千春の個展。市美の作品とは違い、旅行トランクを使ったインスタレーションはおしゃれ。懐旧、思い出、旅行きの記憶。豊島の大型展示作品の模型や、資生堂ギャラリーで展示されていた"Wall"が普通のサイズの液晶TVで再生されていたり。資生堂ギャラリーの展示はなんであんなに小さいディスプレイだったのか疑問だったのか、普通サイズで観てなんとなく見当がついた気がします。裸体が生々しいと判断されたんじゃないかと。

 市美から栄の芸術センターへ。宮永愛子のナフタリンで造形された繊細なインスタレーション。物語を連想させる志賀理恵子の連作写真は出口の無い悪夢を思わせ、張洹の「英雄」もまた違う物語を思わせる力強い存在感。蔡國強の火薬の燃焼を利用した絵画は墨絵の色調に似ているがそのタッチは筆よりも鋭く、生命力がはぜるような描線。ただ、会場レイアウト良くわからず。ギャラリーと県美術館が独立した空間になっているのと、当日は来賓があって通行規制も敷かれ、スムーズな会場移動とはならなかった。それを言うなら市美もあまりいいレイアウトではなかった。同じ建物なのに独立した会場が分散してしまっていて、一体的な空間を持てていないような印象を受けた。

 栄から長者町の分散会場へ。小品が多いエリアではあったのだけど、その中でも印象に強いのはやはり淺井裕介。古い雑居ビルの一室が異空間になってしまう。建物の外観から予想される内装とのギャップが楽しい。

 あいちトリエンナーレ2010の特徴の一つに演劇のイベントが多いことが挙げられるのだけど、残念ながら時間が全くないので、演劇の類は一切見ていない。それらまで愉しむには現地に長期滞在するか、繰り返し名古屋に訪れるしかないだろう。たぶん、これまで現代美術についてあまり触れる機会の無かったこの地域に紹介するという意味合いが強いのだろうと思う。

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