■水戸芸は今年2回目。前回行った時は震災の影響で剥落した外壁のタイルもそのままだったのだけど、今はその補修も終わり、表向きは元通り。ただ、まだパイプオルガンは復旧してはいないようで、ネットがかけられたまま。今回は清川あさみ個展「美女採取」が目的。芸能プロダクションやタレント、女優からの届け物が並ぶ個展というのは初めてです。
清川あさみさんは写真に刺繍した作品が特徴で、初めて目にしたのは東京都庭園美術館での糸ものをテーマにしたグループ展。そこで出展された「Complex」が強く印象に残っています。その後、上野の森美術館のVOCA展に出展された「TOKYO HAZE」など、何回か目にしていて、最近では女優・タレントの肖像写真に刺繍する作品が注目されたりしていて、他のアーティストとは違ったパスを通っている印象がありました。
今回の個展は最近制作を重ねていた女優・タレントの肖像写真に刺繍する「美女採取」シリーズから、過去の作品に遡っての展示。都写美のような写真専門の美術館であればそういう機会は多いかもしれませんが、それでもAKB48の写真が展示されることはそうそうないでしょう。
確かに、広い会場内に女優・タレントの写真が並ぶのは壮観。ただ、刺繍が浮いてしまっている感じ。ベースになっている写真はだいたいB3かA3くらいの、雑誌の見開きサイズですが、そこに全身像が写っている状態で刺繍をすると、刺繍に使われる素材が大きすぎて、テクスチャが浮いてしまう。
このことは意識されていたようで、作品によっては写真と刺繍の素材を合成したか、あるいは刺繍した写真を撮り直したものをベースにし、そこに刺繍を重ねているものもあった。ポストプロダクション処理されている作品が別にあったので、おそらくCG処理して紙と刺繍のマチエルを合わせようとしたのだと思う。ただ、やはり刺繍に使われるビーズなどの素材が物理的に大きすぎるように思いました。
奥の方には「Complex」シリーズが展示されていましたが、そちらは大判の写真で違和感はさほど感じません。装飾に制約の多い女優・タレントとは違い、刺繍する範囲や表現方法がアーティスト側で自由にコントロールできるということも大きいかもしれません。
会場入り口付近の「美女採取」とは違い、奥には高さにしておよそ4メートルほどはあった(ように見えた)「美女採取」の特別版が展示されていたのですが、こちらは刺繍されたテクスチャのいわば解像度がベースの写真とよく一致していて写真と馴染んでいました。確かに「美女」なのでそこに不満は無いのですが、刺繍が添え物のようになってしまった感がなくもなく、その点はやはり「Complex」や造花に刺繍をくわえた「Dream Time」が面白かったです。