■先の震災は、というよりは福島第一原発事故は海外美術館の作品貸し出し判断に影響を与えていて、それは神奈川県立近代美術館も例外ではなく、横浜美術館同様コレクション展に切り替え。「現代美術の展開」という、それはどこの地方美術館の企画だ、みたいなものすごくやっつけなタイトルという気がするのですが、それは仕方ないことなのでしょう。日本の戦後現代美術の変遷というのは都現美の常設ではよくある展示方式で、勉強にはなります。
神奈川県立近代美術館は開館60周年だそうで、これまで蒐集してきた作品からそれぞれの時代時代の作品を抽出して展示しています。50年代の構成主義、60年代の読売アンデパンダン展に代表されるような攻撃的な表現の時代を経て…といった各時期の特徴を会場配布のパンフでは簡単に説明されていて、自分には教科書的でちょっとありがたい。
都現美の常設でも感じていたのですが、表現の野暮ったさという感覚は、やはり古い時期の作品には感じます。作品そのものが褪色しているということもあるだろうし、デザインや表現技法が昔観たものという感覚もある。自分にとってしっくりくるのは比較的近年の作品で、ただその理由はよく解らない。物事を観る視線の取り方に同時代性というものがあるのかもしれません。あるいは発色に対する感性かもしれない。昔の作品はビビッドな色があまり使われていない(か、褪色してしまっている)。ドローイング作品は数十点ほど展示されているのですが、その中でもやはり最近の作品である、伊庭靖子のフォトリアリスティックな作品に一番落ち着きを感じたのは確かなことです。
他、展示室の1つをアブラハム・デイヴィッド・クリスチャンの作品で固め、小個展のような形で使っていた。素朴な土の風合いを感じる彫刻には人の存在に似た佇まいがあり、そこに感じる「砂」の雰囲気が展示室の窓から見える葉山の海と好対照を成していて飽きなかった。
付属レストランで食事して、美術館の周囲をぐるっと散策。この散策路の存在は以前から気付いていたが、歩くのは初めてでした。海岸とは明確に区切られていて、砂浜への直接の見通しはありませんでした。海が近い裏庭を散策している、といった趣。
帰り際、逗子・葉山では有名なプリンの「マーロウ」に立ち寄り。先日ラジオを聴いていたらここのプリンを褒めていたので気になって。「マーロウ」って変わった名前だなと感じていたのですが、お店に行ってみたら、本当に「フィリップ・マーロウ」を意識しているようだ。プリンとの組み合わせが良くわからない。それはともかくプリンは確かにおいしい。お値段もコンビニで買えるプリンなどに比べれば結構するのですが、量は多いし、味がしっかりしていて文句はありません。カラメルも砂糖の味が出ていて、(当然)手作りの風合いはきちんと感じられました。出来合いのものはちょっと食べれなくなりますね。
ところで「マーロウ」、名前の由来が気になるのですが、それとは別にお店のHPの造りも気にはなります。