■SF本の感想を書くのは久しぶり。『屍者の帝国』は伊藤計画が途中まで書きかけてあった断章を円城塔が引き継いでスチームパンクのような作品に仕立て上げた。フランケンシュタインの怪物のように屍者を動かす技術が一般的になった19世紀後半を舞台に、当時を舞台にした作品に登場した人物を多数登場させて『リーグ・オブ・レジェンド』のような物語になっている。
ただ、中核にあるのは「魂とは何か」という問いかけで、そこに他の作品のリフレインを読み取ることができる。結局はアーサー・ケストラーの『機械の中の幽霊』に立ち返り、ということは『攻殻機動隊』にも、ということなのだろうけど、そうしたオーソドックスなところへ落ちていく。
読んでいて何だか神林作品を(特に『言葉使い師』系列)思い出して、まさかなあと思ったらその通りだった。こういう話は今さら大きく飛躍させることは難しいのかもしれない。
それでも、『リーグ・オブ・レジェンド』的な(主人公はシャーロック・ホームズの相棒である、ワトスンだ)側面はそれだけで楽しい。伊藤計画の2長編が持つ世界観が与えた衝撃に比べてしまうと小さくなってしまうけど、それはそれ。あくまで円城塔の作品なのだから、違う読み方があるわけで。
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