■べつに、そちら方面へ転身したいというわけではない。都現美で購入。でも美術書ではなく、どちらかというとビジネス書。もちろん、それと知って購入したのですけど。
前半では現在の社会におけるアートの扱われ方を俯瞰し、後半でアートマネージメントの概要を説明している。
横浜にZAIMとBANKartという施設があり、またトリエンナーレを主催したりして、横浜市が芸術振興に力を入れていることは知っていた。ただ、その背後にある具体的な動きというのは良く解らない。アーティストを呼び集めて金を出せばそれで良しとしているはずはない、ということぐらいは何となく解る。その先は何をやっているのだろう。
乱暴な書き方をすれば、ベンチャー企業に対してインキュベーターというのがあるように、アートに対してアドミニストレーターがいるのだった。アート/アーティストが社会に対して発信できるようにするための枠組みを整備する、あるいは手助けをする、といったところを使命としている。らしい。
もちろん、行政の制度としてアートマネージャー/アドミニストレーターというものがあるわけではないから、アートマネージャーになる人は何か空きポストがあってたまたまそうなってしまうわけではなく、自発的に目指すことになるのだろう。本書の中に、アーティストはアーティストになるために生まれた、という言葉があるが、アートマネージャーもアートマネージャーになるべく生まれてきたようなところがあるのかもしれない。
本書は前半でアート市場の現状を俯瞰してみせる。キーとなるのはアーティストと支援者との関係で、支援者には国家・地方自治体や企業から、美術館・画廊、市民コミュニティなどが含まれる。それにつけても金の欲しさよといった恨み節が透けて見えてしまうのは致し方ないことなのだろう。実利的な成果物が生まれないと、その投資効果は疑問視されてしまうわけだけど、もちろん、その「実利」を巡る価値観が変われば風向きも変わるだろう。
途中、何箇所かで社会におけるアートの価値が語られ、それが筆者の熱意の裏返しということは理解できるけど、少々鼻に付かないわけでもない。
先日金沢21世紀美術館へロン・ミュエック展を観に行った時、その観客の多さに驚いたのだけど、それがブームにしろ何にしろ、皆な何かを求めて美術館へ行き、そこで何かが残ればまた足を運ぶだろう。絶対無変の価値観は無く、少しずつ変化していく。今の状況を戦略に利用すれば一過性のブームに終わらせないことも可能だろうし、その領域にアートマネージャーは求められているのだろう。