■表紙絵は激しい白兵戦を思わせるし、帯には「熱血ミリタリイSF」とかあるし、そういう軍事ものかと思いきや、ぜんぜんそんなことはないのだった。お気楽といえばお気楽で、ただ目立った破綻やひでえ展開があるわけでもなく、あんまり深く考えずに読み通すには十分なのだった。ミリタリイSFというよりは、マネジメントSFなんじゃないの。強いて言えば。
前作、『スターシップ』で主人公のコールは所属しいている軍にあらぬ嫌疑をかけられて逃亡し、艦長として就任していた艦とその乗組員もろとも離反している。『2』は離反したあと、どうやって食べていこうかという切実な悩みから出発し、海賊になろうと決めるところからはじめる。なったらなったで、盗品の換金で悩み、もともとが軍人だから行動原理との矛盾に悩み、なかなか「パイレーツ・オブ・なんとか」とはいかない。
結局、義理と人情を合理主義で包み隠して海賊狩りに乗り出してみても、結局は性に合わない。延々1冊かけて描かれるのは海賊家業は気楽じゃないよという話に終始する。なんだそれ、と思わないでもない。丸ごとブリッジのような話だ。
ただ、これをミリタリイSF(というか、スペースオペラだよねえ)という切り口ではなく、マネジメントSFと思って読めば、主人公コールが随所に見せるマネジメント技法は実生活の参考になるかもしれない。「軍艦の艦長がドラッカーを読んだら」みたいな。それはそれで不毛な気がしなくもないけれど。
なんだか疲れて、知的な部分を刺激される本は重いけど、でも時間つぶしに何か読みたい、という時には良いチョイスだと思います。なんだかんだと通しで読める本でしたし、悪くはないけど、手元に置いておきたいとはあまり思わないという微妙な感じ。
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