■宇宙開発SF短編集。歴史改変型の作品が多いのは、今の宇宙開発をそのままベースに話作りをしてしまったら、どうしても今の政治情勢を意識せざるを得なくなり、制約が強くなるのが避けられたのだろう、と思う。ただ、作品の中に出てくる年号が古いので、どうしても昔のSFを読んでいるような感覚は拭えなかった。
宇宙開発で歴史改変ものとなると、いくらなんでも元ネタが解らない。巻頭に収められた『主任設計者』は殆どノンフィクションに読めてしまう。前世紀の旧ソ連の宇宙開発なんて、そりゃぜんぜん知らないし。
ただ、後の方に納められた作品ほどフィクション色が強まり、『月その六』『献身』などは安心して読めた。表題作の『ワイオミング生まれの宇宙飛行士』もそういう意味では読みやすかったけど、ティプトリーの『ビームしておくれ ふるさとへ』を思い出したり。
ただ、実際の宇宙開発に対する「歴史改変」は、つまり現実の歴史の否定であって、そこに米国の作家達の失望を読み取るのは、意地が悪いのかもしれない。ただ『サターン時代』などを読むと、そこに「未だ至らざる未来」を見てしまい何か痛々しいものを感じてしまったのは確かだ。
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