■前々から伊勢神宮を一度は見ておこうと計画はしていた。ただ、他の美術館の企画展スケジュールとの兼ね合いとか、いざ行こうと計画したら大雨だったりとかで、延び延びとなっていた。それに、神宮だけを目的に歩けるような境地には至っていないというか、真面目に歩こうと考えれば1日かかるし、名古屋からでも移動だけで半日かかるとなると、どうしても考えてしまう。
それでも伊勢現代美術館というところを見つけて、そこへの交通アクセスが伊勢市を経由するとなれば話は別で、午前中に外宮をさっくりと見て回ってから南伊勢町へ移動するというルートを組み立てる。
組み立てたのは8月頭だったのですが、8月上旬は別件で行けず、下旬は大雨でこれまた動けず、こりゃ駄目だなと思っていた8月末日、朝起きたら微妙に好天で、天気予報では南伊勢町は曇天とのことだったのだけど、天気待ちだといつになるのか解らないからと勢いに任せて向かうことに。
8時に起きて、8時半には外に出て、名古屋駅に着いたのは8時10分頃。ここで近鉄に乗り換えて、と思ったら25分発分の特急券が買えない。50分発になるという。しゃあない、急行で、と考えて近鉄名古屋駅に北口から入ったのだけど、近鉄名古屋駅は構内に入ってしまうと路線図が1箇所にしかなくて、どれ行きに乗れば伊勢市に行けるのかがわからない。わたわたしているうちに宇治山田行きの急行が出てしまって乗りそびれてしまう。
結局、構内にある特急券発売機で9時50分初鳥羽行きの特急券を買うことに。普段使わない路線のチケット購入は要領がよく解らない。
近鉄名古屋駅を9時50分に出て、伊勢市駅には11時14分に到着。南伊勢町へのバスが出るのは12時42分なので、1時間半ほどの余裕があることになる。
伊勢駅は近鉄とJRが改札を共有していて、神宮がある西側はJRホームのある側。駅を出ていきなり目に入るのはそこに更地があることを思わせる鉄板の塀で、かつてそこにそれなりに規模のある駅前商業施設があったことを偲ばせるだけに薄ら寂しい。こないだ訪ねた桑名駅前もなんとなく寂しい空気を感じたけれど、こちらはそれ以上にどこか衰退の匂いがある。でも、それは商業的エコシステムの変化でしかなく、神宮は依然として神宮として人を引き寄せ続けているのだろう。
駅前から歩いて外宮へ。正門がどこにあるのか解らないまま敷地に入って鳥居をくぐる。どうやら、第一鳥居の前らしく、まずは手水で手を洗う。観光客の中には飲んじゃっている人もいましたが、大丈夫なのかしらん。
さすがというか何と言うか、外宮そのものは森の中という雰囲気が強いです。良く足を運んだ鎌倉八幡宮も鎌倉の低山を背景に持っていますが、ずっと明るく、乾いた空気の中にあるように思います。それに比べると外宮の参道は暗く、湿った雰囲気を持っています。まあ、前日まで大雨が降っていたのだから湿っていて当然といえば当然。
しかし、境内に揃う太い木々の幹はもちろん、ちょっとした東屋の茅葺はもとより板葺きの屋根まで苔むしているのを見ると、アニミズムの土地ということを意識してしまいます。境内が持つこれらの木々は、たぶん殿舎そのものの建築資材調達のためというロジスティック的な意味合いもあるのでしょうけど。
写真撮影規制の敷かれているエリアの外で数枚撮影すると正午ごろ。食事すればバスの時刻にちょうどよかろうということで、境内を出る。目に入ったのが「伊勢うどん」ののぼりで、一杯の冷やしとろろ伊勢うどんを頼む。
底の方にえらく濃いツユが溜まっていて、これに絡めて食べろ、とお店の人に言われる。うーん、確かにスーパーのお手軽生うどんに比べればおいしいけれど、お手軽というか、具が寂しいというか、小腹が空いた時にちょいと一杯というのが良いように思う。それと、1杯程度ではおなかがふくれない。
ふくれないので別のお店でもう一杯。こちらではめかぶ伊勢うどんをいただいたのだけど、最初のお店に比べると値段がだいぶリーズナブル。ただやっぱり、なんていうか、そばもそうだけど、ツユも飲み干してようやく満腹感を得られるというところがあるので、ちょっと寂しい感じがする。メニューはお店によっていろいろあると思うのだけど、濃いツユの味だけではちょっと、伊勢うどんを目当てに、というのは個人的には苦しい。
伊勢うどんを2軒食べ歩くと時刻はちょうど12時半頃。バスにちょうどいい時間、というわけで五ヶ所行きのバスを待ちました。バスに乗って、降りればそこは南伊勢町です。