■養老天命反転地で天命を反転させた後、再び近鉄養老線に戻り桑名へ。名古屋に戻るだけなら大垣から岐阜をまわった方が早いし安いのだけど、南回りで桑名があるなら寄らない手はない。ロングシートに寝そべってコミックを読む中学生みたいのを横目に眺め、嫌でも自分の育ちの違いというものを意識させられながらサスペンションが殆ど効いていない列車に揺られ、いつの間にか寝入ってしまう。気が付けば桑名。
桑名駅前には駅ビルや広いバスターミナル、ペデストリアンデッキで接続された雑居ビルなどあり、それなりに資本投下されてきた様子。雰囲気は部分的には新橋っぽいところがあるかな。駅前から目に付くところにコンビニがありませんでした。
桑名に来る前に下調べはしていて、目指すのは割烹みくに。桑名では至る所で蛤を食べさせてくれるところがあるのかと勝手に想像していたのですが、案外そうではなく、良く目に付く食べ物やさんは普通にラーメンであったり洋食であったり。
目指すお店は住所から九華園付近ということは掴んでいたので、とりあえずそちらを歩いて目指す。たぶん、30分程度あれば到着するはず。
あまり良い趣味とは思っていませんが、地方の町に来ると、目抜き通りよりもそこから離れた地元向けの商店街やなんてこともない路地を覗くようになってしまいました。正直物珍しいので、と言ったらおこられるかもしれませんが。ただ、再開発のサイクルから取り残された地域の景観は、かつてはその周囲と連続して街並みを形成していたはずで、そこから少し前の町の風景を見通すことができます、というのはきれい過ぎますかね。
予定通り九華園近くには難なくたどり着いたものの、目指すお店は見当たらず。とりあえずあたりを散策してみることに。六華苑は見てみたいような気もしていたし、と、まずは川岸の方へ。そこで初めて知ったのですが、ここは地球の真ん中だったのでした。
別にそのあたりは何万気圧の超高温状態というわけでもありませんが、まあ、なんていうか、言った者勝ちですね。球の表面で真ん中も何もないわけで、というのは言わずもがな。
この公園では女子中学生っぽいのがソフトボールの練習をしていました。微妙に女投げっぽかったんですが、それでも上投げ。ただ、まあ、おせじにもあんまりコントロールが良いという雰囲気ではなく、というか、「バットでボールを打ったり、投げたり、蹴ったりすること禁止」という微妙に誤読しそうな立て札があちこち立っていたんですが、ええのかいな。バットで投げているわけではないからいいのか。
対岸のなんだか富士山みたいのが乗っかったやぐらのようなものを遠目に眺めながら、川岸を北へ歩く。たぶん、10分も歩いていないと思うのですが、六華園を示す交通標識が見えてきました。
六華苑は広い庭園を持つ古いお屋敷を一般開放している場所で、つまりは古い建築物を見ることができます。門から入って最初に目に入るのが、洋館なので、港の見える丘公園付近でも良く見たなあ、などと最初は思ったのですが、それは甘かった。苑の案内図では洋館、和館という表記があって、単純に二棟並んでいるのかと思ったのですが、二棟ではなくて1つに結合しているのでした。
天命反転地でちょっと感覚がズれたところでこういう建物を見てしまうのはあんまり具合が良くありません。和洋折衷とは言い難く、何か間違って転移されてしまったようにも見えます。中に入ると、洋館の内装では隠されたように和室の要素が入り込んでいますが、それが当時の生活を偲ばせるような気がします。
六華苑を見終えて再び九華園方面へ。女子達は相変わらずソフトボールを投げ、リードから放たれた小型犬が走り回る。
お店は見つからないけど、このまま帰るか、と手近にあった出口から路地に降り、小さな橋を渡って角を曲がったらありました。割烹みくに。
案の定、夕食時間帯は17時からで、それには少し早い。まあ、ここまで来たら待ちますよ、とソフトボール練習らしきものを眺めに公園へ戻る。怪しまれているだろうなあ。
さすがにフラット化した濃尾平野だけあって、FM愛知がしっかり入る。まあ番組はスペイン坂製なんですけどね。ラジオを聴いて時間を潰し、頃合を見計らってお店へ。
さすがに開店直後ということでお客は自分ひとり。先方もヘンな時間帯でシングルで飛び込んできたこいつは何者か、という感じがあって、なんとなく微妙に探りあうような感じで。頼むものは「その手は桑名の蛤定食」と決めてあったので、それを注文。
そういえば蛤ってあまり食べたことなかったなあ。時雨煮は何かで食べたことがあったような気はする。定食は、蛤の酒蒸し、時雨煮の茶漬け(ただし蛤のだし汁を使う)、茶碗蒸し、煮物付け合せ、メロン、といったちょっと軽めな感じ。もうちょっとがっつりお値の張るものでも良かったのですが、蛤目当てだったので。
お話を伺ったところでは、蛤の旬は4月~入梅前までとのことで、雨水が入ると死んでしまう貝があるし、7月になると放卵するので身が痩せてしまうとのこと。まあ、シーズンとしては終わり際で、そういう意味では良い時分ではあったのでしょう。
ただまあ、濃尾平野の西側を1日かけて一周しつつあるわけで、さすがに疲れた。帰りは桑名から関西線の快速みえに乗って一路名古屋へ戻りました。桑名駅ではピアス付けまくりのパンクな外国人がいて謎でした。それこそ何しに来ていたのだろう。