■自分でも不思議なんですが、この映画、何度も観に行っています。紅茶に茶柱の立つカットから始まるオープニングからエキシビジョンマッチ、山中への隠居、ボコミュージアムでの出会い、熊本への帰郷、文科省役人との対決、対大学選抜チームとの序盤戦、どんぐり小隊による奇襲戦、遊園地跡地での奇襲、そして西住姉妹のコンビネーションを見せた最終決戦。それらシーケンスを全部思い出せるのだけど、それでも観てしまうし、見飽きない。2時間あるのに2時間を感じさせない映画というのは、個人的には過去に覚えがない。
基本的に大きな物語を持っておらず、小さなエピソードの積み重ねで構成されていて、気が付くと終わっているという感じです。登場人物たちはそれぞれの事情を持っていて、TVシリーズの時には解決されずに気になっていたものが映画では少し掘り下げられていきます。
代表的なエピソードは主人公である西住みほの家族関係でしょう。実家を勘当されて熊本から茨城県大洗に母港を持つ大洗女子学園に一人転校してきたみほは姉とも母とも距離感を遺したままTVシリーズは終わります。映画では、その関係も少しずつ良くなっていることが描かれています。みほにとって、大洗での体験は実家から独立し、自己を確立する過程でもありました。
熊本を去る契機となった出来事でみほは心に傷を負い、その象徴として使われたのが傷だらけの熊のぬいぐるみ「ボコ」でしたが、みほがトラウマを乗り越えた後ではその扱われ方も変わり、弱くても強い相手に立ち向かう大洗女子とその仲間たちの象徴になっています。
他に大きなエピソードとしては旧ソ連をモデルにしたプラウダ高の隊長カチューシャをめぐるものがあります。カチューシャは自身の小さな背に劣等感を抱えていて、その裏返しとして強烈な、しかし幼児的もある自己顕示欲と権力欲をあらわにします。自分がトップに立たないと気が済まない彼女ですが、映画の中で彼女は自分が多くの仲間に助けられ、支えられていることを自覚させられます。彼女の右腕である副長のノンナ、強力な砲力を持つKV2もまた、彼女の劣等感を補う存在ですが、途中、それらを失って一人で進むことになります。それもまた、みほと同じくカチューシャにとっての自立する過程でもあるのでしょう。
一年生チームの成長も各話の楽しみの一つです。TVシリーズでは「重戦車キラー」の名前をもらいましたが、映画ではそうそううまくいきません。ただ、彼女たちの働きが後半戦の分水嶺となったのも確かです。
映画はそうした小さなエピソードが続き、そしてどれもが観る側が気になっていた事柄ということもあるため、見飽きることがないのかもしれません。