■ずいぶん久しぶりな気がしますが映画館に行きました。「トータル・リコール」です。フィリップ・K・ディックの『追憶売ります』が原作で、ポール・バーホーベン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で一度『トータル・リコール』で映画化されていることも有名な話と思います。大まかなプロットはすでに解っている話で、ただ、火星には行かないことが前情報として伝わっていました。
コロニーに圧政を敷くコーヘーゲン長官とレジスタンスをまとめるマサイアスの対立構造、コーヘーゲンの部下で偽の記憶を埋め込まれたまま一介の労働者に身をやつしているダグラス・クエール、そのダグラスの監視役を努めるコーヘーゲン配下のエージェントがダグラスの妻を偽装し、レジスタンス側のヒロインが登場し、偽妻と対立するという基本的な人間関係は同じ。
火星のコロニーという舞台はなくなり、かわりに地球の裏側と往復する地球貫通トンネルが登場する。このトンネルの設定はちょっと面白いのだけど、地球の核を貫通していたり、核を通過する時だけ無重量状態になるなど、ちょっとへんなところがある。エレベーターは落下して地球の裏側に向かうのだけど、自由落下状態に近いだろうから、その時すでに無重量状態になっているはずなのだ、とか、地球の核が持つ熱量に耐えられるトンネルの構造材って何、とか、大気圧もすごいことになっているはずだけど、とか、いろいろと残念な感じ。
コーヘーゲンはコロニーの軍事制圧に乗り出すのだけど、その理由が土地不足解消というのも不思議なところです。コロニーは「植民地」のはずですから。そのコロニーは労働者の居住地という設定ですが、その労働力を毎日地球の裏側と往復させているのもずいぶん経済効率悪そうですし、警察活動を担うロボットが大量に登場するのですが、それだけのロボットがあるなら、それを働かせれば良さそうな気もします。
何よりコロニー側は侵攻を防ぐのであれば、往還トンネルを封鎖してしまえば良いはずなのですが、手をこまねいてエレベーターカーゴが到着するのを待っているだけというのもヘンな気がします。
いろいろ気になるところが多い映画でしたが、実際のところは観ている間愉しんでいました。第1作のオマージュというか、意図的にミスリードさせるようなシーンがあったり、ビジュアルもブレードランナーや攻殻機動隊を思わせるものがあったり。いろいろなアクション映画やSF映画のシーンを彷彿とさせる場面が多いのも面白かったです。
追いかけっこを中心としたアクションシーンが多く、そのアクションを魅せるために設計された舞台デザインという感じでしたが、色合いが落ち着いていて下品な印象はしませんでした。『マイノリティ・レポート』は洗練されたデザインが印象に残りましたが、それに近いように感じていました。
意表を突くような展開というのは難しかったと思うのですが、それを補うように追いかけっこのアクションやそのビジュアルで愉しむ映画だろうと思います。