■別に東京だけがメディアアートやっているわけではないので、各地で面白そうな展示があるのであれば、是非観に行きたいものと思ってはいたのだけど、そうは言っても先立つものがなければ現地まで行くことも覚束ない。お金と時間、主に時間かな。
そんなことを考えていたわけですが、名古屋に拠点ができたので、これ幸いと東海地域のソレ系を観に行きたい。そんなこと考えていたちょうどいいタイミングでIAMASの卒展があるので、観に行きました。
展示作品は印象に残るもの残らないものいろいろあったのですが、やっぱりインスタレーションが好きかな。写真オフセット印刷に関する実地研究の発表というのがあって、それは結構面白かったです。他には滝川クリステルフィルタとか。有害情報フィルタという作品コンセプト自体に滝川クリステルとの関係は全くないんですが、作品実装がそのようになっていて、可笑しかった。
それはそれとして。
会場になっているのは岐阜県大垣市のソフトピアジャパンという場所で、大垣駅からバスで20分ほど。だいたい30~60分間隔でバスが出ていて、駅前でちょっとゆですぎの蕎麦を食べてから乗り込んだ。
車窓から眺めてすぐに気が付くのは、空きテナントや、全体がロックアウトされている建物が目立つことで、商業的な中心地は広い道路沿いに移ってしまっているということか。とかなんとか薄らぼんやり思ったのですが、それはバスがロックシティに入ったことで裏打ちされました。
ロックシティは広い駐車場を有するショッピングセンターで、路線バスがこの敷地に入ったのにはちょっとびっくりしました。
行きと帰りの2回ともこのショッピングセンターにバスに乗ったまま立ち寄ることになったわけですが、乗り降りする人はいませんでした。だいたい自家用車がびっしり詰まっているところなんだし。しかし、車がないと生活できないって、それはかえって不便なんじゃないのか。
ロックシティを抜けると、周囲は民家もまばらで寂しい感じに。そんな中にちょっとモダンなビルが聳えているのが目立ち、どう考えてもあれ以外に「ソフトピア」なんてものは名付けないだろうと思っていたら、やっぱりその建物がソフトピアなのでした。
ソフトピアジャパンは情報サービス系企業の育成と集積を目指しているのだろうと思う。ちょっと郊外にある企業集積地っていうと、神奈川県下で連想するのは厚木の「森の里」とか横須賀の「YSR野比」といったところなんだけど、それに近いのかな。
ただ、なんか異様に感じたのは、IAMASの卒展を見終わってあたりをうろついている時に見かけた景色で、地域開発に計画性が無さそうというか、ここにあるのは何か異質なものなのだ、という雰囲気でした。
田園から戸建住宅地への転換が行われている地域に隣接してモダンなビル群を並べているわけで、たぶん単純に土地買収費用の問題だったのだろうなあという気が。正直言ってこの施設群へのアクセスはおせじにも便がいいものではないのですが、それでも「アクセスがいい」と言い切ってしまえるのは自家用車移動の意識が強いからなのでしょうね。
地域の発展という言葉がありますが、車社会の中での「地域」というのは物理的に連続して広がるエリアという感覚は無くなっていて、自分の家と、買い物先と、勤め先の3点とそれらを結ぶ線だけが意識されているのではないかという雰囲気を感じます。
出発地と目的地だけが意識され、その間にある土地は無用のものとしてスルーされる。自分が見たものは大垣市の極一部でしかないのですが、駅前の静かさとショッピングセンターの喧騒、企業集積地とその周辺地域との景観の落差の大きさを見るとゴーストエリアの中に経済拠点が点在する景色というのが生まれつつあるのかなという予感がします。