■ICOはプレイステーション2向けにリリースされたゲームソフトで、出たときにすごい評判が高かったことは知っていたのだけど、ゲーム内容の紹介だけではどうも面白さがわからなくて結局ベスト版として出たときに購入した覚えがある。主人公である少年のイコがヒロインのヨルダの手を引いて古城の中を進むというビジュアルは印象的だったのだけど、初めてプレイした時はパズルを解くだけで精一杯で、終わらせたときは疲れきってしまった。
その後、宮部みゆきの『ICO -霧の城-』といった関連本も出て読んだけど、ゲームの方はしんどさの記憶があって、リプレイする気にはなれなかった。「スイカエンディング」の話は知っていて、見てみたいとは思っていたのだけど。
そうこうするうちにPS3が出て、買って、それからしばらくして、ICOのPS3版がリリースされた。さすがに懐かしくてダウンロードしたのですが、雰囲気は当時そのままで、しかしビジュアルはくっきりしていて良かった。もう何年もたつのに、漠然と解き方を覚えていて、昔のようにひどく時間をかけるようなことはなかった。
たぶん、遡れば「MYST」のような、洗練された美術背景を持つ空間を舞台にしたパズルゲームに辿りつくのだろうけど、そのゲーム空間が持つ静かな雰囲気や、ヒロインの手を取り続けるヒロイズムなどシステムやハードウェアに依存しない要素から生まれる情緒性はPS2と変わらない。
初回は思い出しながら進めて、だいたい8時間。イコが初めて女王と邂逅するまで、東の闘技場を解放するまで、西の闘技場を解放するまで、最後の女王との対決まで、が時間的には等分される感じだった。
一周終わって、二周目は要領もわかっていて、ほぼ4時間。隠れアイテムの「光の剣」も取れたし、念願のスイカエンディングを見ることもできた。面白かったし、余韻も多いのだけど、このゲームそのものはPS2時代のものであることを思うと、ゲームというものを成り立たせているものについてあれこれ思わずにはいられない。
ハードウェア処理が向上して、かつてのコンソール機で実現できなかった処理が実現されているのは確かなのだけど、ゲーム体験そのものはコンソールのハードウェア性能に依存していない。ゲームという仮初めのお遊び空間に入り込めるかどうかのきっかけは、とても繊細でデザインされていないと実現できないのではないかと感じる。
そういえばICOは表立ってストーリーらしきものが語られないので謎が多かったのだけど、今回あらためて解いてみて背景の事情がわかったような気がしました。角の生えたイコがなぜ城に生贄として連れてこられたのか、〈影〉は何者なのか。そしてまた光と影、思春期の中にある少女と〈グレート・マザー〉たる女王の配置、アニマ・アニムスといったオーソドックスな物語の読み解きとの照応など、いろいろな側面で愉しむことができました。こういうゲームは独創性が高いだけになかなか世に出てくることのない作品なのでしょうね。とても面白いゲームなのは皆が言うように間違いのないことだと思います。