■お盆休みで横浜に戻ったとき、ついでだからと都現美-森美の周遊ルートを辿った。都現美では「ジブリ・レイアウト」展と「パラレル・ワールド もうひとつの世界」展を開催中。ジブリの方は別に今更という感じもあり、しかも完全予約販売制なのであからさまにパス。狙いは「パラレル・ワールド」と展示入れ替えとなった常設展示展の方。「ジブリ」効果でそれはもう5月連休の金沢21世紀美術館並みの混雑を予想していたのですが、ぜんぜん混雑していませんでした。それはそれでラッキー。
「パラレル・ワールド」はフランス人アーティスト、ユーグ・レブがキュレーションした作品が展示されていて、ぱっと見た感じは欧州コミックの雰囲気。ちょっとレトロがかったフレンチコミックのような、現実の相を少しずらして「ありそうな、あり得ないもの」を見せてくれます。たとえば「逆立ちの木」は、雑木林のスナップなのだけど、中央に写っている木は根を天に向けて生えていたり。あるいは街の景色を撮影したビデオに人面鳩が映っていたり。
ビデオ、ドローイングの他にスカルプチャもありましたが、「草の雲」という緑のもしゃもしゃなマリモみたいなものが一列に並んで毛虫のようになっているものなどあり、なんか妙な印象。なんとも言いがたいんですが、色合いとか造型とか、異質なセンスの感じが。
異質と言えば、展示作品の中では異質だったのが、名和晃平のPixCellで盆栽とかアイボとか、フラミンゴとかいった普通のオブジェをかなり強い屈折率を持つアクリル板のキューブに収めていて、一見ホログラムのように見える。実物が中にあるはずなのに実物を見ることができていないことが解る。左右の目で見えるパララックスも狂わされているようで、じっと見つめていると酔ってきます。見えているのに、見えていない。
常設コレクション展2では先日の豊美「Blooming」で見た島袋道浩の「ヘペンチスタのペネイラ・エ・ソンニャドールにタコの作品のリミックスをお願いした」の元ネタになった「タコの作品」がかかっていた。他にはサルにプレゼントを持っていったという写真とか、5月の神戸の海際でサンタクロースの格好をして青いゴミ袋を手にしているという、何もかもなんか間違っている写真とか。豊美では島袋氏の解説めいたものを聞いているのですが、基本的に人を愉しませよう、笑わせようと思って作品を作ったのだけど、当時の日本ではあまり受け入れられなかったのだと。神戸のサンタクロースの写真を見たとき、そのコメントを思い出しました。うーん、確かにそうかも。
他には加藤美佳の「カナリア」が持つ目力が印象に強い。たんなるドローイングではなくて、暖色系の色を使った点描で、間近で見ているとなんかガーリィフォトっぽい。粒子の粗い写真のような雰囲気、と思ったら後で調べてみたら人形をポラロイドで撮影した写真を描いているとのこと。道理で。目で直接見た色ではなくて、写真を通して変換された色彩と画像を写し取っていることになる。
こちらにも名和晃平のPixCellがあって、こちらの作品はガラスの球体で構成されたバンビ。他には定番の草間彌生とか奈良美智とか。青の色合いが印象に残っているのが横内賢太郎。記憶の中のアールヌーヴォ調の絵画から色だけが溶け出したような構成で綺麗。
表に出たら何か銀色に光るでかい氷山のようなものがあって、こちらも展示作品。美術館に入るときも目にしているんですが、その時は何かを覆っているだけだと思っていました。美術館に多少ヘンなものがあっても驚かなくなっているんですね。