■待たされただけのことはありました。もともとは2014年公開とか言っていたような気がするのが、2015年夏に延期され、結局はかろうじて12月には届かない11月21日公開。公開初日に観に行きました。
ストーリーは単純で、TVシリーズで試合を経験した好敵手たちと共に大洗女子学園の危機に立ち向かう「オールスター」作品になっています。TVシリーズでは小~中隊規模を指揮していた主人公は、今度は大隊規模を指揮することになり、個々の戦線指揮はかつての好敵手が務める中隊長に一任されます。
その点で西住みほの「軍神」的な采配は影を潜め、いずれも個性豊かな好敵手たちにフォーカスが当てられています。決勝戦で競い合った姉の西住まほをはじめとし、カチューシャ、アンチョビ、ケイ、ダージリン、他には劇場版で初登場の知波単学園の西絹代に継続高校のミカ。さらには彼ら各校の隊長を支えるそれぞれのメンバーが参加し、登場人物は多彩です。
対する相手は大学選抜チームとそれを率いる天才少女の島田流後継者、使用される車種も戦車道レギュレーションぎりぎりの戦後にも継続して使用された戦車群に(例によって)特殊な車両も混ざる精鋭。
見どころは各隊長たちの指揮・戦闘ぶりに加えて、まだまだ戦闘単位としては未熟な部分も多い大洗女子各チームの成長ぶりになるでしょう。サンダース戦でシャーマンに追いかけられていたM3がケイ麾下に置かれ「ラビッツ」と呼ばれてアリサやナオミにカバーされているのは胸が熱くなります。
旧帝国陸軍をモデルとした知波単学園は無謀な突撃癖を持っていて危なっかしいのですが、そんな彼らは逆に大洗女子から「負けないこと」を軸とするドクトリンを学んでいくことになります。
「小が大を倒す」はもともとのTVシリーズにもあった対マウス戦闘がそうでしたが、劇場版でも健在です。ただ、今回の作戦は「軍神」みほではなく、大洗メンバーたちの自発的な立案・実行によるものです。
他にもカチューシャとそのメンバーたちとの交流の中で「小さな暴君」がなにがしかを学んでいく過程も印象的。
激しい戦闘の中で敵味方双方数を減らしていき、ラストは西住姉妹と島田流天才少女との闘いになります。姉妹は、というかそれぞれのチームは力を合わせて勝利をおさめ、姉妹の絆が再確認されます。それはTVシリーズではその片鱗が描かれただけですが、映画版では改めてまほの妹想いが(「ラブラブ作戦」(二尉マルコ))のように描かれることになります。
いろいろと胸が熱くなるシーンが多い映画ですが、それとは別に偵察・警戒にあたる各隊の絵が玄人的で印象に残ります。特に雨の中を行くケイの中隊が各車車長がカッパを着て双眼鏡を手に全周警戒にあたるシーンは一瞬ですが忘れられない絵のひとつです。すでに初日の動員数が記録的数字となった本作品ですが、長く上映がつづくロングラン作品になってもらいたいと思わずにはいられません。