■札幌国際芸術祭(SIAF)に行きました。単純な観光やグルメ旅に興味がなかったこともあって、今まで北海道に行ったことがなく、今回が初めてです。「札幌芸術の森美術館」も名前は聞いたことがあったのですが、交通費との兼ね合いもあってこれまで行かずじまいでした。SIAFは昨今の地方型ビエンナーレ/トリエンナーレの例にたがわず地域分散型であちこち観るべきところがあり、行ってみてもよいかなという気になりました。ただ、広域分散というのがひっかかるところで、これまでのように1日2日で回れるような気がしませんでした。会場は大きく札幌市街地、札幌芸術の森、モエレ沼公園の3カ所に分かれていて、芸術の森とモエレ沼公園それぞれの移動時間に片道で1時間ほど見込まれました。これまでの経験上、二泊三日コースかなと。
考えた末、初日は新千歳空港から札幌市街に入る前に芸術の森美術館に寄ることにしました。芸術の森美術館は地下鉄真駒内駅からバスを使いますが、幸いにして新千歳空港からの高速バス便のうち、真駒内駅を経由するものがあったので、それを使うことにしました。真駒内駅ではちょうど目的の路線バスが待機中だったので、殆ど待つことなく美術館へ。
札幌芸術の森はいわゆるホワイトキューブ型の美術館施設のほかにいくつかの記念館と屋外彫刻展示の野外美術館から成り立つ、この美術施設そのものが大きな敷地を持っている。彫刻展示の野外美術館は箱根彫刻の森みたいなものかとたかをくくっていたらとんでもない話で、彫刻の《山》でした。高低差がけっこうあって、ちょっとしたトレッキングコースのような趣です。箱根のようにピカソやムーアといった目玉があるわけではないのですが、背景となる山そのものの存在が強く、山の雰囲気に対抗できるような作品は山の雰囲気との相乗効果をもって印象に残ります。彫刻展示はSIAFとは別ものなのですが、観れて良かったです。
SIAFとして印象に残ったのはやはりというか、手堅い感じの宮永愛子《そらみみみそら》。野外彫刻では愛子は愛子でも宮脇愛子の《うつろい》が風景に溶け込んでいて良い感じでした。彫刻の森と比べてしまうと、現代美術家が多いのが特徴かもしれません。その展では箱根より面白かったのですが、そのために何度も来るかというとそれはやはり微妙な。
宮永愛子の《そらみみみそら》のモチーフになっているのは炭鉱です。ほかの展示でも共通してみられたのは札幌という土地に対する開拓者を起点とする連続性のように思いました。札幌という街はひどく計画都市としての作りが意識されるのですが、その一方で強い自然の姿と間近に対峙している、その界面を意識させられる都市でもあります。ただその意識や目線というのは開拓者としてのものであって、古くからその土地で暮らしている、自然の中で生きてきた、つまりアイヌの視線とは違うだろうとも思いました。開拓・入植者からの歴史的な連続性と自然の中に配置された都市という空間的な連続性がSIAF 2014の背後にあるおおきなテーマとなっていますが、サッポロという土地に対する外来者という立ち位置はまだ未消化のままのようにも感じます。その微妙な居心地の悪さは札幌という土地ならではの事情でしょう。未だに開拓者という意識は残っている、という見方もできると思いますが、先住民族であるアイヌとの不連続性が未だ解消できずにここまで来てしまっている、という見方もできるように思います。
ラ・フォレスタでワッフルセットを食べた後、札幌市街とのシャトルバスに乗り、大通駅まで戻ったころにはだいぶ歩き疲れた感じに。そのままホテルにチェックインして初日は終わりました。